teacup. [ 掲示板 ] [ 掲示板作成 ] [ 有料掲示板 ] [ ブログ ]


スレッド一覧

他のスレッドを探す  スレッド作成

新着順:6/21 記事一覧表示 | 《前のページ | 次のページ》

5・15事件(一海軍士官の青春) 16

 投稿者:管理人  投稿日:2010年 6月16日(水)09時20分25秒
  通報 返信・引用 編集済
  5・15事件(一海軍士官の青春)  林正義 著

   第3章  東京軍法会議


      1.公 判 (後)

   公訴状内容


   罪名と被告

反乱      休職海軍中尉          古賀清志
同       同          中村義雄
同       同          三上 卓
同       予備役海軍少尉    黒岩 勇
同       休職海軍中尉     山岸 宏
同       同   少尉     村山格之
反乱予備        待命海軍少尉     伊東亀城
同       同          大庭春雄
同       待命海軍中尉     林 正義
同       同   大尉     塚野道雄



  犯罪事実

 被告等は孰れも直接又は間接に故海軍少佐藤井斎より思想上の感化指導を受けたるものなる処、右斎は海軍兵学校在学時代より、日本を盟主として亜細亜民族の大同団結を計り、白色民族の横暴を懲し、以て道義を世界に布かんとするの所謂大亜細亜主義思想を抱懐し、被告古賀清志、同村山格之等を指導して共に同志拡大に努め居りしが、昭和五年軍縮会議問題に附随して統帥権干犯問題起り世論沸騰するや、之を以て政党財閥及君側重臣の結託に依り斯る非違を敢てしたるものとなし、大に之を憤ると共に、現代日本に於ては政党政治家、財閥及特権階級等孰れも腐敗、堕落して国家観念なく、日本をして政治、外交、経済、軍備、思想等各種の方面に行詰りを生じ、国家滅亡の虞あるに至らしめたりとし、之が革新の要ある旨を説きて被告伊東亀城、同大庭春雄等を指導し同年七月頃茨城県新治郡土浦町料亭山水閣に村山格之、伊東亀城、大庭春雄外十数名を、同年十二月二十八日福岡県糟谷郡香椎村香椎温泉に被告三上卓、古賀清志、村山格之外十数名を糾合し、国家革新を目的とする一団を形成して直接行動に依る非合法運動に従事することとなれり、此の前後に於て被告山岸宏は伊東亀城の勧誘を受け同年十二月より、被告林正義は三上卓の勧誘を受け昭和六年二、三月頃より、被告中村義雄は古賀清志の勧誘を受け同年十一月より、被告黒岩勇は三上卓の勧誘を受け昭和七年一月より上記藤井斎を中心とする一団に加入し、爾来孰れも右運動に従事し来りたる処、藤井斎は上海事変に出征して同年二月五日戦死するに至りたるも、被告等は依然として其の運動を継続し、被告塚野道雄も亦林正義の勤誘を受け同年三月より之に加入したり、当時霞ケ浦海軍航空隊に勤務し運動の中心地たる帝都に遠からざりし関係上、古賀清志、中村義雄の両名は勢ひ主として其の衝に当ることとなりしより、前記素志貫徹の為先づ集団的直接行動に依り帝都の治安を素して一時恐怖状態を出現し、以て戒厳令の布告せらるに至るべき情勢に立至らしめ、戒厳令下に国家革新の実を挙げんことを企図し、予て被告等と其の目的を同じくして革新運動に従事し居りたる茨城県東茨城郡常磐村三千三十九番地愛郷塾長橘孝三郎、同塾教師後藤圀彦、同林正三、同県那珂郡前渡村大字前浜九百九十九番地川崎長光、明治大学学生奥田秀夫、元陸軍士官候補生池松武志及陸軍士官候補生後藤映範外十名と提携するに至れり。

 而して被告等は予てより直接行動の準備に専念し、之に使用すべき武器入手に腐心して孰れも手榴弾、拳銃等の蒐集に努め



(一) 村山格之は

  一、昭和七年一月二十一日実父従弟佐賀県小城郡北多久村大字多久原三百三十四番地予備役陸軍歩兵大尉長尾秀雄より南部式拳銃一挺を入手し、更に同人の紹介に依り同月二十四日海軍少尉沢田邲をして秀雄知人第五師団勤務陸軍歩兵少佐門司昇一より同拳銃用弾丸約四十発を入手せしめ、同年二月中旬沢田邲は右拳銃及弾丸を下宿呉市下山手町二十八番地岩佐六郎をして古賀清志に送付せしめ

  二、駆逐艦薄に乗組み同月二十三日上海に出征し、同年四月十六日上海碇泊中の軍艦出雲に於て海軍大尉田崎元武より「ブローニング」拳銃一挺、同弾丸五十発を入手し、当時通信艇として上海、佐世保間を往復し居りたる駆逐艦楡乗組大庭春雄をして佐世保に持帰らしめ、次で同月二十一日自ら之を古賀清志に手交し



(二) 伊東亀城は上海出征中戦線に於て負傷の際戦闘用として携帯し居りたる手榴弾一個を其の儘所持して後述せられる佐世保海軍病院に入院せしが同年二月十二日同所に於て之を林正義に手交し、正義は同年三月二十二日之を黒岩勇に郵送し



(三) 三上卓は上海出征中同年二月中旬特別陸戦隊用の手榴弾二十個を入手して之を村山格之に手交し、格之は駆逐艦楡乗組大庭春雄に手交し、春雄は同月二十七日頃之を運搬して佐世保海兵団勤務林正義に手交し、正義は之を同団勤務塚野道雄に手交して其の私室に隠匿せしめ、更に同年四月九日正義は佐世保市熊野町五番地塚野道雄宅に運搬し、同所に於て林正義、大庭春雄、黒岩勇及塚野道雄の四名にて道雄所有の手提鞄に納め、勇は一旦之を佐賀県小城郡東多久村大字別府四千四百二十一番地の実家に持ち帰り、曩に林正義より郵送を受けたる一個と合せ手榴弾二十一個を同月二十一日鉄道便を以て東京市内に輸送し、次で友人東京府下王子町下十条千五首五十番地田代平方に隠匿し



(四) 古賀清志、中村義雄の両名は同年二月下旬より三月下旬に至る問に於て同府荏原郡大崎二百三十一番地財団法人東亜経済調査局理事長、神武会頭、法学博士大川周明、同府豊多摩郡澁谷町常磐松十二番地天行会長頭山秀三、同会理事本間憲一郎に上記企図の大要を  告げて其の賛同を得、依て清志は

  一、同年四月三日周明方に於て同人より拳銃五挺、同弾丸百二十五発及運動資金として千五百円を

  二、同月二十九日同所に於て周明より運動資金として二千円を受領し

  三、同年五月十三日同所に於て黒岩勇をして周明より運動資金として二千五百円を受領せしめ

  四、同年四月十七日秀三方に於て本間憲一郎より拳銃三挺同弾丸若干を

  五、同月二十二目茨城県新治郡真鍋千三百二十三番地本間憲一郎方に於て同人より拳銃一挺、同弾丸若干を

  六、同月三十日頃同郡土浦町大和町三千二十八番地染谷忠助を介し同所に於て憲一郎より拳銃一挺、同弾丸若干を受領し



(五)古賀清志及中村義雄は拳銃、手榴弾の不足を補ふ為め短刀を入手せんと欲し、池松武志及奥田秀夫に対し資金を給して之が購入方を命じ、同年四月二十四日旭松武志より四口を同年五月三日奥田秀夫より三口を、翌四月池松武志より二口を、同月十四日奥田秀夫より三口を受取り



(六)三上卓は右同様の目的を以て同日短刀二口を購入したり



 以上の外

(一)三上卓は上海出征中同年二月下旬特別陸戦隊用陸 式拳銃一挺、同弾丸十五発入五箱及八発入弾倉二個入手して之を村山格之に手交し、格之は駆逐艦楡乗組大庭春雄に手交せしが、同人は予て卓の指示に基き上海北四川路長春路百八十七号松下洋行事松下兼一を介し同年五月九日同洋行に於て「モーゼル」拳銃一挺、同弾丸百二十発、保弾鈑四個及メリオ拳銃一挺、同弾丸八十三発を購入して上記陸式拳銃其の他と共に決行の際之を使用せんとする目的を以て同艦私室に隠匿し置きたるも其の意を果さず

(二)塚野道雄及林正義は同年五月三日当時道雄方に同居中の佐世保市万津町川原石油店店員予備役陸軍歩兵少尉岩重徳雄に対し資金を給し、長崎其の他に於て銃入手に奔走せしめたるも、遂に其の目的を達せざりしものなり



 一方古賀清志は中村義雄と相謀り前示企図に付き其の実行計画を樹立せんと欲し、同年三月下旬より之が起案に着手し数次洗練の結果、同年五月十三日一案を得同月十五日に至る迄の間に於て伊東亀城、大庭春雄、林正義及塚野道雄を除く外全部の同意の下に之を決定せり、即ち古賀清志、中村義雄、三上卓、黒岩勇、山岸宏、村山格之、奥田秀夫、池松武志及陸軍士官候補生後藤映範外十名を四組に分ち、上記の武器を使用して同月十五日午後五時三十分を期し第一段に於て第一組は首相官邸、第二組は内大臣官邸、第三組は政友会本部、第四組は三菱銀行を襲撃し、第二段に於て第四組を除く他の三組は相合して警視庁の襲撃を敢行し別に橘孝三郎の一派を別働隊となし、同日午後七時頃日没時を期して東京市内及其の附近に電力を供給する変電所数ケ所を襲撃せしむることとし之に依り政党の領袖にして内閣の首班たる者を屠り、君側の奸と目する者を除き、更に政党財閥打倒の意を闡明にすると共に、警視庁に於て動員せらるべき武装警官隊と決戦して警察力を破壊し、以て支配階級擁護の任にありとなす警視庁を膺懲し、其の無力を民衆に知らしめて之が奮起を促し、変電所を破壊して帝都を暗黒化し軍力を以てするに非ずんば克く秩序を維持する能はざるの事態を惹起せしめ、延いて戒厳令の施行に至らしめんことを期し、加ふるに従来被告等と国家革新道動に従事したる東京府下代々幡町代々木山谷百四十四番地元陸軍騎兵少尉西田税を目して被告等の計画実行を妨害するものとなし、此の機会に川崎長光をして之を暗殺せしむることとしたり


而して古賀清志は予め前記武器中

 一、手榴弾六個を変電所襲撃用武器とし、黒岩勇の手を経て林正三は之を後藤圀彦に手交し

 一、短刀六口を変電所襲撃の際携帯すべき武器とし、西田税暗殺用武器として川崎長光に交付すべき拳銃一挺、同弾丸八発及短刀一口と共に之を後藤圀彦に手交し

 一、残余の武器は黒岩勇、中村義雄と共に東京市芝区栄町十三番地東京水交杜に運搬し内手榴弾二個、短刀一口を三菱銀行襲撃用武器とし中村義雄の手を経て奥田秀夫に交付し、其の他は同水交社に於て各組別に之を分配したり

斯くて昭和七年五月十五日第一組に属する三上卓、黒岩勇、山岸宏、村山格之は各自制服を着用し、武器及「日本国民に檄す」と題する檄文を数百枚を携帯して陸軍士官候補生後藤映範、同八木春雄、同石関栄、同篠原市之助、同野村三郎と共に同日午後五時頃靖国神社境内に集合して三上卓、黒岩勇、後藤映範、八木春雄及石関栄の五名を表門組とし、山岸宏、村山格之、篠原市之助、及野村三郎の四名を裏門組として二隊に分れ、各隊自動車一台を使用し東京市麹町区永田町二丁目一番地内閣総理大臣官舎に向い、途中各自車内に於て武器を分配し、三上卓は拳銃一挺、手榴弾一個及短刀一口、黒岩勇は拳銃一挺、短刀一口、後藤映範は拳銃一挺、八木春雄及石関栄は各手榴弾一個を、山岸宏は手榴弾一個、短刀一口、村山格之は拳銃一挺、篠原市之助及野村三郎は各拳銃一挺、手榴弾一個を携帯し、表門組は同五時二十七分頃同官舎表門より自動車を正面玄関前迄乗入れしめ一同下車して直に同玄関より屋内に闖入し、予て偵察したるところに依り首相は平常同官舎日本館に起居するを知り其の通路を探索したるも見当らず、一同玄関広間に於て巡査部長村田嘉幸に出会いしより三上卓、黒岩勇は同人を脅迫して首相の許に案内せしめんとしたるも果さず、更に後藤映範は恰も同所に来りたる私服巡査に対し同様案内せしめんとしたるに之に応ぜずして玄関外に遁るるを見て其の背後より拳銃一弾を発射したるも命中せざりき、其の後三上卓は漸く日本館に通ずる廊下を見出し、同廊下板戸を蹴破りて一同を内部に導き日本館洋式客間に於て巡査田中五郎に対し首相の所在を糺したる処、其の態度反抗的なりしより之を憤り同人に対して拳銃一弾を放ち其の右胸部より膵臓を損傷して左側腹部に通ずる貫通銃創を負はしめ、因て同人をして同月二十六日同市赤坂区伝馬町一丁日二十番地前田外科病院に於て死亡するに至らしめたり、山岸宏等の裏門組は同官舎裏門附近に於て一同下車し、同門より邸内に進み日本館玄関より屋内に闖入して表門組と合したるが篠原市之助は同玄関車寄の前方に於て附近に居合せる制服巡査を威嚇する目的を以て銃口を斜上方に向け、拳銃一弾を発射して之を遁走せしめ、其の後同玄関内に止まり外部見張の任に当りしが須叟にして三上卓は遂に日本館食堂に於て首相犬養毅を発見したるより、大声を揚げて一同に其の旨を知らしめ 首相と共に十五畳敷の客間に至り同室に於て一同首相を取囲み二三問答の際、突然山岸宏は「問答無用射てッ」と叫び、黒岩勇は之に応じて首相の左前方より同人に向け第一弾を放ち、左下顎骨角の直上より頭蓋腔内に入る盲管銃創を負はしめ、三上卓も亦第二弾を放ち首相の右頠顓部耳殻前方より右眼外眥の上方に貫通する銃創を負はしめ、困て同人をして同月十六日午前二時三十五分同官舎内に於て出血に依り惹起せられたる脳圧に困る心臓及呼吸麻痺の為死亡するに至らしめたり、弾丸の命中したるを見るや山岸宏の引揚の声にて一同相続て日本館玄関より外庭に出でしが、巡査平山八十松が木太刀を揮って被告等に立向はんとしたるより、篠原市之助は拳銃を擬して「射つぞ」と脅迫し、黒岩勇は同人に向け一弾を放ちて右大腿貫通銃創を負はしめたるのみならず、村山格之も亦後方より同人に向け一弾を放ち左前脚貫通銃創を負はしめて一同首相官舎裏門を立出て、赤坂区溜地町に於て二台の自動車に分乗し、三上卓、山岸宏、後藤映範、石関栄、篠原市之助の一隊は午後五時五十分頃警視庁に到りたるも其の予期に反し庁外平穏にして襲撃の要なきを認め、之を中止して其の儘同市麹町区丸ノ内一丁目十番地東京憲兵隊に自首し、黒岩勇、村山格之、八木春雄、野村三郎の一隊は警視庁襲撃の目的を以て同五時五十分過同庁に到り、表玄関車寄に停車せしめて一同内部に闖入し、同庁二階一室の硝子房を蹴破る等の暴行を為し、再び自動車に同乗して上記憲兵隊正門に到り内部を窺ひたるも同志未だ自首したる形勢見えざりしを以て予定外襲撃場所協議の際偶々警視庁より自動車にて同人等を追跡し来りたる同庁警部補新堀虎吉を発見したるより黒岩勇は之に対し拳銃を擬し同警部補の遁れんとする後方より一弾を発射したるも命中せざりき、右協議に依り同市日本橋区本両替町三番地日本銀行襲撃を決定して同銀行に到り村山格之、野村三郎の両名下車し野村三郎は同銀行玄関に向ひ手榴弾一個を投擲して玄関前庭に於て炸烈せしめ、敷石、石段等を損傷して一同憲兵隊に自首したり



 第二組に属する古賀清志は制服を着用し武器及前記檄文数百枚を携帯して池松武志、陸軍士官候補生坂元兼一、同管勤、同西川武敏と共に同四時三十分頃同市芝区高輪泉岳寺境内に集合し、同寺門前茶店力亭事山口弥太郎方二階に於て古賀清志より行動要領を説明し、実行に際しては特に警視庁に重点を置き、内大臣官邸に於ては門外より邸内に手榴弾を投じて以て同邸を脅し、必ずしも内大臣牧野伸顕を殺害するの要なく直に警視庁に急行すべき旨を語りて武器を分配し、古賀清志及池松武志は各拳銃一挺、手榴弾一個、西川武敏は拳銃一挺、坂元兼一及管勤は各手榴弾一個、短刀一口を携帯して同亭を立出で、一同自動申に同乗して同五時二十七分頃同区三田台町一丁目五番地内大臣官舎正門に到り、同門前に自動車を停めて古賀晴志、池松武志の両名下車し清志は同門前より門内に向って手榴弾一個を投擲し、玄関前庭に於て之を炸烈せしめ板塀等を損傷し、池松武志も亦清志に続いて手榴弾一個を門内に向って投擲したるも不発に終り、次で清志は拳銃を擬して同邸に立番勤務中の巡査橋井亀一を射撃し、同人の左峰鳥嘴啄突起部に貫通銃創を負はしめ、再び自動車に乗じて沿道に檄文を撒布しつつ同五時四十分頃第三組に稍遅れて警視庁に到着したる処、其の予期に反して決戦を試むべき警官の集合あらざりしも、同庁表玄関に向い左側車道に於ける同玄関附近の地点に停車して清志を除く外全員下車し、上記計画に従ひ同所附近に於て坂元兼一及菅勤は同庁建物に向ひ手榴弾各一個を投擲せしが不発に終り、西川武敏及池松武志は自動車内なる古賀清志と共に孰れも表玄関に向って拳銃を発射し困て同玄関車寄に居合はせたる警視庁書記長坂弘一に対し、下顎部貫通銃創及右膝膕部盲管銃創を負はしめたるのみならず、読売新聞記者高橋巍に対し右下腿貫通銃創を負はしめ、斯くして一同自動車に乗じ同六時頃東京憲兵隊に自首したり



 第三組に属する中村義雄は制服を着用し、武器及前記檄文数百枚を携帯して陸軍士官候補生中島忠秋、同金清豊、同吉原政巳と共に同四時三十分新橋駅に集合し、同駅前に於て自動車に同乗したるも未だ決行時刻に達せざりしより時間を調節する為市内諸所を巡り、各自車内に於て武器を分配し中村義雄は拳銃一挺、手榴弾一個、金清豊は手榴弾一個、短刀一口、吉原政巳は拳銃一挺、中島忠秋は拳銃一挺、手榴弾一個を携帯した外、忠秋は其の所有に係る短刀一口を所持し、同五時三〇分頃同市麹町区内山下町一丁目一番地立憲政友会本部前に到り、義雄は下車して同本部東入口より構内に立入り、同玄関に向って手榴弾一個を投擲したるも、不発なりしより之を拾ひて再び段榔したるに之亦不発に終りしを以て、忠秋は直に下車し同玄関に向ひ手榴弾一個を投擲して之を炸裂せしめ正面露天演壇附近を損傷し、同五時四十分頃警視庁に赴きたる処、予期に反して決戦を試むべき警官の集合あらざりしも同庁表玄関前車道に停車し、義雄を除く外全員下車し上記計画に従い金清豊は菅勤の投じたる前示地点附近より建物に向って手榴弾一個を投擲せしが、誤って路傍の電柱に中り炸裂 子、電線等を損壊して一同再び自動車に乗じ、沿道に檄文を撒布しつつ同五時五十分頃東京憲兵隊に自首したり



 第四組奥田秀夫は中村義雄より配布を受けたる手榴弾二個を携へ、同市麹町区丸ノ内二丁目五番地の一、三菱銀行附近に赴き状況偵察の後同区有楽町一丁目二番地美松百貨店屋上に於て同五時三〇分頃警視庁方面に爆音の起るを聞き、其の後丸ノ内警察署員の出動するを見て愈軍部同志の決行したるを察知し、同七時三〇分頃再び同銀行に至り、其の西側道路上より同銀行構内に向ひ手榴弾一個を投榔したるも同銀行と三菱道場との中間路上に落下炸裂し、同銀行並に同道場の外壁等を損傷して逃走し、残余の手榴弾一個は友人中橋照夫の下宿なる東京府下杉並町高円寺五百十一番地堤次男方に隠匿したり
別働隊たる橘孝三郎の一派は前示計画に従ひ


一、大貫明幹は後藤圀彦より配布せられたる手榴弾一個、短刀一口及自ら購入したる金槌、電線鋏各一挺を、高根沢与一は圀彦より配布せられたる短刀一口を携帯し、同七時十三分頃相共に同府北豊島郡尾久町下尾久二百番地鬼怒川水力電気株式会社東京変電所に到り、明幹は与一をして右鋏を用ひ同所西側貯水池附定の外柵鉄線を切断せしめたる上、電動喞室に侵入し、配電盤施設の冷却送水用電動喞筒第二号用三極開閉器を絶縁して右喞筒の運転を停止し、金槌を以て同第一号用三極開閉器を破壊し、更に与一をして屋外の主要なる変圧設備に向ひ、右手榴弾を投擲せしめんとしたるも同人は明幹が破壊用具を投棄して跳走を開始したるを見て俄かに恐怖心を生じ、右手榴弾を其の場に投棄て逃走し

  横須賀喜久雄は後藤圀彦より配布せられたる手榴弾一個短刀一口及自ら購入したる手斧、電線鋏各一挺を携へ同七時過埼玉県北足立郡鳩ヶ谷町三ツ和字畑田二千七百五十番地東京電燈株式会社鳩ヶ谷変電所に到り、電動喞筒室内に侵入し手斧を以て配電盤施設の三極開閉器及電動送水喞筒三台に附着せる水圧計各三個を損壊し、加ふるに古鋏を以て配電盤上起動用開閉器に通ずる配線八本を切断したるのみならず、右手榴弾を露天建造物に向ひ投擲して之を炸裂せしめ、困て主要変圧器中性点接地抵抗器基礎の一部を爆破して逃走し

一、塙五百枝は後藤圀彦より配布せられたる手榴弾一個、短刀一口及自ら購入したる金槌一挺を携へ、同七時十五分頃上記尾久町上尾久二千番地東京電燈株式会社田端変電所に到り、電動喞筒室内に侵入し、配電盤施設の電動送水喞筒に通ずる三極開閉器二個を絶縁して右喞筒の運転を停止せしめ、加ふるに金槌を以て配電盤上電流計四個を破壊し、更に同室内電動機を爆破する目的を以て右手榴弾を投擲せんとしたる際、当直員に発見せられ其の意を果さずして逃走し

一、温水秀則は後藤圀彦より配布せられたる手榴弾一個、短刀一口及自ら購入したる手斧一挺を携へて同七時十分頃同府豊多摩郡淀橋町角筈五百八十六番地東京電燈株式会社淀橋変電所に到り、飲用水用喞筒電動機小屋に侵入し手斧を以て電動機配線一本を切断したるのみならず、右手榴弾を冷却塔に向い投擲して之を炸裂せしめ、因て同塔東北側板囲の左上角を爆破して逃走し

一、矢吹正吾は後藤圀彦より配布せられたる手榴弾一個、短刀一口及自ら購入したる金槌一挺を携へ、同七時十五分頃同府南葛飾郡小松川町字下平井二百六十五番地東京電燈株式会社亀戸変電所に到り、電動喞筒室内に侵入し配電盤施設の漉水及送水電動喞筒用三極開閉器四個を絶縁して同喞筒の運転を停止せしめたるのみならず、同室屋上に向ひ右手榴弾を投擲したるも不発に終りし儘逃走し

一、小室力也は後藤圀彦より配布せられたる手榴弾一個及短刀一口を携へ、同六時五十分頃同府豊多摩郡戸塚町清水川百八十番地東京電燈株式会社目白変電所に到りたるも、襲撃に先ち恐怖心を生じて之を断念したり前記の如く別働隊の行動は単に変電所内設備の一部を破壊したるに止まり、東京全市は勿論其の一部をも暗黒ならしむるの効果を奏せざりしものなり

 而して川崎長光は拳銃一挺、同弾丸八発及短刀一口を林正三の手を経て後藤圀彦より受取り、同日午後七時頃西田税方に到り同家二階六畳の客間に於て同人に面会し、之が殺害の機を窺ひ、同七時三十分頃税に向って拳銃六発を発射し、困て右手掌貫通銃創、右前膊貫銃通創、右上膵盲管銃創、右前胸より右側胸部に亘る貫通銃創、及下腹部盲管銃創を負はしめて逃走したり

 被告中伊東亀城は当時入院中に係り、大庭春雄、林正義及塚野道雄は準備不充分の故を以て古賀清志、黒岩勇に対し決行の延期を求めたるも容れられず、為に孰れも右実行に参加せざりしものなり(陸軍側公訴状は略す)



この間被告一同起立、傍聴席酷も咳一つなく検察官の峻烈なる語調に耳を傾けること小一時間、次いで塚崎弁護人立って発言を求めて被告並びに弁護人を代表して裁判公開の大原則を主張し、十時二十分高須裁判長の指図によっていよいよ高法務官の事実審理に入る。

http://akebonokikaku.web.fc2.com/

 
 
》記事一覧表示

新着順:6/21 《前のページ | 次のページ》
/21